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車がなくても大丈夫。沖縄都市モノレール沿線の生活環境を紐解く、地元んちゅと巡る&探る那覇の暮らし(前編) – 沖縄の暮らし Vol.5

 2023-01-10
車がなくても大丈夫。沖縄都市モノレール沿線の生活環境を紐解く、地元んちゅと巡る&探る那覇の暮らし(前編) – 沖縄の暮らし Vol.5

「ねえ、夫婦で沖縄に移住しようかと思うんだけどさ」

都会に住む友人からのメッセージに、反射的にこう返信した。「え、でも君、免許持ってないよね。車がないと沖縄はきついと思うよ。電車ないし」

返ってきたメッセージには、「あなたも車に乗らないじゃない」の一言。そうだ、私も車は運転したこと、なかった…!!!!

それもそのはず、私が住んでいるエリア、那覇市首里石嶺(いしみね)は、モノレール「首里駅」まで徒歩約10分、バスの営業所も徒歩至近という交通の便が非常にいい立地なのだ。

小・中学校、スーパーや病院など、生活に必要な施設は全て徒歩圏内にあった。高校卒業後は沖縄を離れ、Uターン後は在宅でできる仕事のため通勤の必要はなく、たまの県外での打ち合わせの際にも、空港へははモノレール一本でスイスイ移動できる。

「モノレール沿線なら、車のない君たちでも快適に暮らせるかもしれない」。メッセージをやり取りしたのが今から2週間前のこと。それからあれよあれよという間に準備を進めたらしく、彼らは本当に沖縄へやって来たのだ。

「平日休みって言ってたよね?」確かに私はそう言った。が、しかし、まさか私の休みに、彼らがスケジュールを合わせて来るとは。しかも夫婦そろって。どうやら彼らの移住計画は本気のようだ。

「平日のほうが、通勤や町の様子がよく分かるかと思って。これから住む場所のことは、雰囲気を含めてちゃんと知っておきたいじゃない?」至極まっとうな意見と、期待に満ちた表情に気圧されつつ、沖縄の一大都市、「那覇(なは)」のモノレール沿線行脚が始まったのであった。

これは彼らと、1日でモノレール駅18駅(未開通の4駅も含む)を踏破した私の記録である。

いざ、沖縄都市モノレール「ゆいレール」の旅路へ

今回の記事で沿線をめぐる沖縄都市モノレール「ゆいレール」は、沖縄・那覇空港から那覇市首里までを結ぶ全長12.9kmのモノレールの路線だ。電車のない沖縄の交通事情を、バスと並んで支えている。マイカーを持たない我々の強い味方だ。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」2両編成で165人の定員をもつ車両は、1日に250以上の本数が運行しており、利用者数は2018年度には1日あたり5万人を突破した。年間、じつに1905万7176人を運んでおり、その数は右肩上がりに増加を続けている。景気がいい話だ。

5万人超とは、さいたまスーパーアリーナに近接する「さいたま新都心駅」の1日の乗車人数と同じくらい…というと、規模感を想像していただけるのではないだろうか。

空の玄関口から「那覇空港駅(なはくうこうえき)」から那覇の中心地へ移動

沖縄都市モノレール「ゆいレール」県外からの二人を迎えたのは、空の玄関口「那覇空港駅」沖縄県の公式サイトによれば、1日の乗降者数は7,027人(2019年6月現在)で、ゆいレール駅中もっとも多い。沖縄を訪れる観光客の増加の影響か、2018年度に初めて、2001年の開通以来16年間トップの座に君臨し続けた「県庁前駅」から首位の座を奪い取った。

ゆいレールの乗車券は、紙のきっぷとICカードを採用している。沖縄県の路線バス、モノレールのみで使用できるICカードの名称は「OKICA(おきか)」。使い方はSuicaなどの交通系ICカードと同様で、ゆいレール各駅の切符売り場で購入・チャージできる。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」2019年7月現在では、OKICAと県外の交通系ICカードとの互換性はなく、県外からの旅行者を戸惑わせているが、2019年5月、2020年の春をめどにSuicaの導入予定が発表された。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」今回は各駅での乗り降り予定があったため、OKICAは使用せず、1日乗車券を購入した。24時間以内に3、4回乗り降りすれば元が取れるおトクなきっぷだ。

※以下、各駅の1日乗車人数は沖縄県の公式サイトから引用(2019年6月現在)

閑静な住宅街の入り口「赤嶺駅(あかみねえき)」

沖縄都市モノレール「ゆいレール」赤嶺駅那覇空港駅の雰囲気から一変して、赤嶺駅の周辺には住宅街が広がる。1日の乗車人数は2,433人(※ 2019年6月現在)と、那覇空港駅の3分の1以下だ。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」赤嶺駅住宅地なら、住民以外はあまり用事がないだろう…と思うのは少々待っていただきたい。赤嶺駅は、沖縄本島南部に位置する、豊見城市や糸満市への出発地点にもなっているのだ。駅から2kmほど南下すると、アウトレットモール「あしびなー」や、絶景や温泉、マリンアクティビティなどが楽しめる瀬長島の「ウミカジテラス」にたどり着く。

赤嶺駅から「ウミカジテラス」には、車がない私たちのために無料のシャトルバスが運行しているため、休日にはぜひ活用したいところ。バスで移動すれば、訪れたお店でお酒だって飲める。まるで楽園なのである。

「あしびなー」向けにも各路線バスが運行しているが、那覇空港国内線ターミナルのバス乗り場から向かうのが一番簡単だ。モール内にはレディス、メンズ、キッズ、洋服はもちろん、アクセサリーや靴などのショップが揃う。気合いを入れて思いっきり爆買いしたい気持ちに寄り添ってくれる場所だ。

生活の拠点となる住宅街、小さな公園が多い「小禄駅(おろくえき)」

沖縄都市モノレール「ゆいレール」小禄駅赤嶺駅を出発し、ほどなく到着するのが小禄駅。1日の乗降者数は3,775人(※ 2019年6月現在)で、15駅中5番目に多い。

引き続いて住宅街のエリアだが、赤嶺駅と大きく違う点は、駅直結のショッピングセンター「イオン那覇店」の存在だろう。「那覇」を冠しているだけあり、那覇市内のイオン系列店の中では随一の売り場面積を誇る。車を持たない民にとって、心強いお買い物スポットといえる。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」那覇市の公式サイトによると、赤嶺・小禄エリアは、約6万人が暮らす(2019年4月現在)住宅地なだけあり、市立金城小学校、市立小禄小学校、市立小禄南小学校、市立さつき小学校など学校が立ち並び、保育園や公園も多いエリアだ。

大きな滑り台やアスレチックが整備された「田原公園」、思い切り走り回れる広さの「小禄金城公園」のほか、徒歩15分おきに一つと言っていいペースで公園や広場が存在し、自宅から気軽に遊びに行ける。歩道がきちんと整備されている道路が多いのも安心だ。

球場に武道館、アクティブに過ごす「奥武山公園駅(おうのやまこうえんえき)」

沖縄都市モノレール「ゆいレール」奥武山公園駅小禄駅から続くなだらかな坂を下りきったところに「奥武山公園」がある。駅の1日の乗降者数は2,281人(※ 2019年6月現在)。

冬場にはプロ野球のキャンプが行われたり、野球やサッカー、陸上の大会も通年開催されている。土俵や武道場まで、スポーツならなんでもござれだ。

奥武山公園から徒歩圏内に住居を構えれば、読売ジャイアンツの冬季キャンプに日参したり、朝から公園内をウォーキングするなんてことも可能な暮らしを実現できる。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」奥武山公園駅(無料の駐車場を利用できるため、マイカー派、モノレール派が集まっての気軽な運動やサークル活動にも便利。平日はランニング、休日は草野球。健康的な生活が送れる。

スポーツのほかにも、毎年10月下旬には、県産品の新商品が発表される「沖縄の産業まつり」の会場となったり、同じく10月に、全長200m(ギネス記録)の大綱を引く「那覇大綱引き」が開催されるのに合わせ、花火や屋台、ステージプログラムが開催されるお祭り会場にもなる。国際通りから奥武山公園まで一帯の盛り上がりは、広大な公園から人が溢れ出るほどだ。

また、奥武山公園内には、「護国神社」「沖宮」「世持神社」などの神社が建立されており、年始には初詣の参拝客も多い。駐車場は軒並み満車になり、公園付近には渋滞が発生するため、車よりはモノレールでの参拝が快適だろうし、お神酒も飲める。

公園そばでのどかに暮らす「壺川駅(つぼがわえき)」

沖縄都市モノレール「ゆいレール」壺川駅モノレールの線路は、奥武山公園を囲むようにぐるりと北上し、国際通りなどがある那覇の中心部へ。その途中の壺川駅の1日の乗降者数は2,072人(※ 2019年6月現在)。仕事のためというより、奥武山公園へ部活に向かうジャージ姿の学生が多く利用している印象だ。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」壺川駅駅付近には集合住宅が立ち並び、ランドマークの「那覇中央郵便局」が、東または南東に進むと、学校や公園のある楚辺、与儀といったエリアに到着する。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」壺川駅壺川駅から奥武山公園に続く北明治橋を渡ると、駅から5分足らずで奥武山公園に到着する。陸上競技場、プールや護国神社、琉球八宮の沖宮などへのアクセスは、奥武山公園駅よりこちらの壺川駅からの方が便利だ。

沖縄本島の交通ネットワークの起点「旭橋駅(あさひばしえき)」

さらに那覇市の中心へ。旭橋駅の1日の乗降者数は3,893人(※ 2019年6月現在)で、那覇空港駅、後述の県庁前駅やおもろまち駅に次ぐ。

2018年末には、新生の那覇バスターミナル、県立図書館や那覇OPAといった複合商業施設「カフーナ旭橋A街区」がオープンし、これからますますの発展が予想されるエリアだ。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」旭橋駅カフーナ旭橋はAからEまでの5つの街区からなり、そのうちA街区には、県内各地へのバスの起点となる「那覇バスターミナル」がある。公共交通機関のお世話になっている身には、「交通の要所」ともなる重要な施設だ。

沖縄本島中部〜北部へのバス移動は、慣れないうちは大きな困難を伴うが、そんな時は迷わず、那覇バスターミナル内の「バスたび案内所」で確認しよう。バスでの移動がぐっと楽になる。県内を走る路線バスでは、モノレールと同様にICカードの「OKICA」が使える。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」旭橋駅旭橋駅のほど近くからは、沖縄本島北部までを縦断できる道「国道58号線」がスタートする。県民の車移動を支える基幹道路だが、その分非常に混雑するため、朝晩のラッシュ時には、車での通行は避けるのが無難だろう。

余談だが、この国道58号線、鹿児島県は天文館にほど近い「朝日通り」から、海路を経て旭橋駅近くの「明治橋」まで達している道で、海上を含めた長さは884.4kmにもなる。壮大な道路だ。

ビジネスの拠点となる「県庁前駅(けんちょうまええき)」

「県庁前駅」との駅名のとおり、沖縄県庁をはじめとするオフィスビルが建ち並ぶエリア。それに加えて、国際通りの西側の入り口でもある。デパート、ギャラリーや劇場などが軒を連ねる商業施設「パレットくもじ」に直結しており、通勤や観光、ショッピングなど、さまざまな目的をもつ乗客が乗降する駅だ。

県内唯一のデパート「リウボウ」の地下には、食品、お酒、銘菓店などが並び、沖縄でデパ地下といえばここだけ。お上品な手土産を用意する際には、ぜひ立ち寄りたい。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」県庁前駅1日の乗降者数は7,001人(※ 2019年6月現在)で、トップの那覇空港駅との人数差差はなんと26人と僅差だ。

朝晩の通勤ラッシュ時はそれなりに混雑するが、駅員に押し込まれて乗車する場面には出くわしたことがないため、東京の通勤ラッシュを考えると乗車環境はいい方なのではないかと思う。

スクランブル交差点を囲むようにビルが建つ景はさながら大都会だが、県庁の裏手には小学校が、さらに南下して壺川駅までの間には住宅地が広がっている。明治44年開校の伝統をもつ「県立那覇高校」も近い。

観光地でありオフィス街でもあり、さらに学校も立ち並んでいるため、県庁前駅付近の土地は常にフル活用されている。するとどうなるか。そう、駐車場の料金が高くなる。観光客などがよく利用するコインパーキングはもちろん、月極の契約駐車場も、他のエリアに比べ倍の料金がかかることは珍しくない。便利な車生活の、数少ない悩みのタネだ。

ちょっとディープな那覇の町「美栄橋駅(みえばしえき)」

沖縄都市モノレール「ゆいレール」美栄橋駅県庁前駅、この次の牧志駅と並んで、国際通りや周辺のホテルにアクセスするのに便利な美栄橋駅。2つの駅の中間に位置していることから、国際通りの中心部を訪れる近道かと思いきや、そんなことはない。県庁前駅、美栄橋駅、牧志駅から国際通りの中心部までの距離は、どの駅からも大体同じくらいだ。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」美栄橋駅から国際通りに向かう「沖映通り(おきえいどおり)」から一本横道に入ると、味わい深い店構えのカフェやセレクトショップが並ぶ「ニューパラダイス通り」、猫が歩く路地裏や、遊具や歩道が整備された「緑ヶ丘公園」などにたどり着く。

ちょっとディープな国際通りを楽しみたい時は、美栄橋駅で降りるといい。ちなみに、沖映通りには沖縄県最大の書店「ジュンク堂書店」がある。

県庁前駅から美栄橋駅に向かうゆいレールの線路は、那覇市内を横断する「久茂地川(くもじがわ)」の上を走る。久茂地川沿いには地元の人がよく訪れる飲食店が並び、少し足を伸ばして10分ほど歩くと、国道58号線を渡り、那覇随一の歓楽街「松山」にたどり着く。賑やかなエリアだ。美栄橋駅周辺に住めば、お酒を飲んだ後でも自宅まで歩いて帰れる。

沖縄都市モノレール「ゆいレール」美栄橋駅商業施設ばかりかと思いきやそうでもなく、駅徒歩すぐのところに那覇市立那覇小学校、那覇幼稚園がある。さすがに国道沿いには一軒家はないものの、一歩裏通りに入るとマンションやアパートなどがひしめく。

1日の乗降者数は3,113人(※ 2019年6月現在)で、15駅中8番目、ちょうど真ん中の順位だ。

国際通りの終着点「牧志駅(まきしえき)」

沖縄都市モノレール「ゆいレール」牧志駅県庁前駅から始まった国際通りは、牧志駅でひとまず東側の終端となる。1日の乗降者数は3,542人(※ 2019年6月現在)で、15駅中7番目、1つ前の美栄橋と並んで、ちょうど真ん中だ。

「国際通り」というとザ・観光エリアのイメージだが、美栄橋駅と同様、牧志駅付近にも住宅地が広がっている。観光と暮らしが調和する町だ。

駅のすぐ隣は市立牧志小学校、市立真和志中学校も徒歩圏内。沖縄県民の台所といえる地元のスーパー「サンエー」「りうぼう」なども近く、マックスバリューなら駐車場も完備している。

県庁前駅から牧志、この次の安里駅までのエリアは、那覇市の中心部ではあるものの、築年数によってはリーズナブルな賃貸住宅も見つけることができる。

国際通りや県庁付近にお勤めで通勤時間を短くしたい、または通勤ラッシュを避けたい方、私のようにペーパードライバーで車の運転が不安な方には、ぴったりのエリアだ

沖縄都市モノレール「ゆいレール」牧志駅牧志駅直結の商業施設「さいおんスクエア」は、いっけん観光客向けの施設のようだが、那覇市牧志駅前ほしぞら公民館・図書館が併設されており、地元の親子にも愛されている。そして、駅から10分ほど歩くと、観光スポットとしても有名な「壺屋(つぼや)」のエリアへ。

おしゃれなカフェやショップが並ぶ小路は、「やちむん通り」として親しまれており、やちむん=焼き物を扱うお店には、観光客だけでなく、食器を求めに地元の人も訪れる。少し幅の狭い、昔ながらの面影を残した通りでは、やちむんの窯やツタの這った石垣を見ることができる。

モノレール沿いの、「古き良き」の言葉が似合う静かな住宅街は、のどかで暮らしやすそうな雰囲気だが、たいてい道幅が狭く、車では通りづらそうだったり、付近の駐車場が少なかったりする。不便なように見えて、「車を持たない暮らし」にはちょうどいい環境なのかもしれない。

移住計画検討のためのモノレール駅巡りはまだまだ続く。というか、ようやく全駅の半数を回ったところだ。後編の記事では、これから開通予定の石嶺駅、経塚駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅を含む残りの駅についてご紹介するとともに、モノレール沿線の二人暮らし生活について考察を深めていきたい。

(文・撮影/なかそね ことみ、編集/OKINAWA GRIT 代表 みやねえ

 

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この記事を書いたライター

なかそね ことみ
沖縄出身、沖縄暮らしのライター。広島、新潟、東京を経て、2018年、生まれ育った地元ににUターンしてきました。車の運転が苦手なので、公共交通機関でどれだけ沖縄を満喫できるかに挑戦しています。今もっとも熱いのは「ゴールデンカムイ」と「琉球漆器」。