たぶん私は、直感で文章を書いてきた人です。
ライターを始めた頃は、「どうしたら上手な文章を書けますか」と聞かれて言語化できずにいました。2015年にWebライティング講座をスタートして、それをキッカケに自分の思考を言語化、なるほどこういうことか!と納得し、自分の思考を整理すること、言語化する時間をつくることが、いかに大切かを学んだ気がします。
理解しやすい言葉に変換し、伝わりやすく説明する。ポイントを箇条書きにまとめる。伝え方を工夫すれば、理解してもらえる確率が上がる。それは、文章を書いて読者に届けるのも同じこと。
「文章を書くこと=伝え方に工夫が必要」
読者と対話するように、文章を届けたいものです。今記事では、ライターさんに役立つ「文章術の書籍」を選び、どんな方に向いてるかを考察しました。
個人的な感想とともに、参考になったら幸いです。
目次はこちら
1. マジ文章書けないんだけど(前田 安正さん)
この本は、ライター入門編。コミカルに綴られた「マジ文章書けないんだけど」は、ライター初心者の方に絶賛おすすめしてます。主人公の女子とおじさんが会話をしながら文章術を学ぶストーリー仕立てが面白く、可愛いイラストが癒しモードで攻めてきます。読みやすくて、苦もなく楽しく学べる「初心者向け、文章術の本」だと言えます。
全4章にわかれて順序立ててレベルアップできる内容は理解しやすく、文章を書くときはここに注意しよう!と一般的に言われている内容と少し角度を変えて、なるほど納得!な新鮮な気づきを得られます。
■1st. STEP(第1章)
「文」と「文章」の意味の違いから始まり、基本中の基本「主語と述語」の解説など、例文を分解してわかりやすく説明してくれます。内容もわりと濃く、「が」と「は」の違いは目から鱗でした。普段なら「が」と「は」の違いを気にして会話しませんよね。
が:格助詞(主語にあたるものを示す)
は:係助詞(主語を示す場合と、そうでない場合がある)
むむっ! 実は「は」が曲者のようです。日頃から文章と向き合ってる人なら、うん…わかる。わかるわ……と、ちょっと感動しますよ。
否定で使う副詞の例文。なにこの文…意味不明…!と読むだけで違和感を抱けたら大正解です。新人ライターさんの原稿を編集していると、たまに見かける文章のねじれ。間違えた言葉の使い方を鵜呑みにしてきたか、最後に原稿を推敲していないか。どちらかが原因だと思われます。
■ 2rd. STEP(第2章)
話題モリモリ。「能動態と受動態の使い分け」は、違いに気づかず文章を書いてる人もいると思います。ここ大事、ほんと大事! 誰の目線で文章を書くか。ここを意識するだけでガラリと変わります。沖縄で開催しているライター講座で、いつも話す内容が書かれていたり、一般的に読点「、」の配置はこれといった正解がない中、納得がいくロジックで語られています。
特に重要なのが以下です。
● こそあど言葉
● 同一表現を繰り返さない
●「だが」「ので」を極力使わない理由
● 能動態と受動態の使い分け
● 時間軸を取り入れる
● 読点の位置を意識する
原稿を書くとき、または最後に推敲する際に意識してみましょう。
■3rd. STEP(第3章)
主に文章の組み立て方を解説した第3章。特に重要なのが、以下だと思います。
● 述語にかかる品詞を揃える
● 1つの文には1つの要素だけ(一文一意/一文一義)
● 状況、行動、変化で文章を考える
● 箇条書きで文章を作つくる
■ Final. STEP(最終章)
最後は応用編です。有名な思考法のひとつ「5W1Hの活用」や「Why」を追求してイマジネーションを働かせること。写生文を使い、客観的に書くコツなど、いくつもの引き出しが用意されてます。
そして最後に、「ES(エントリーシート)の書き方」に触れて、プロフィール文に必要な情報の落とし込み方、文章の整え方を説明しています。署名記事を書く際はプロフィールが重要な役割を持つため、最終章を読み進めながら同時進行で自分のプロフィールを作成すると良さそうですよ。
ポイントまとめ「マジ文章書けないんだけど」
- ■レベル
初心者向け、ライター経験1年未満 - ■主に習得できるスキル
文章術の基礎、品詞や文法、正しい文章の作り方 - ■向いている文章スタイル
文章術入門編。全般に適応できる
2. 頑張ってるのに稼げない現役Webライターが毎月20万円以上稼げるようになるための強化書(吉見夏実さん)
この本は、クラウドソーシングの初心者向け。といっても、この書籍に何度も出てくるとおり、文章術を学ぶ本ではなく、クラウドソーシングを活用するWebライターの「悩みを解決してくれる本」だと確信しています。
私の場合、クラウドソーシングで案件を受注した経験がありません。
それでも読んでいて、クラウドソーシングがどういうものか。何が大事で、何に気をつけて行動すべきか。著者の実体験から詳しく解説されていて、あらゆる作業への想像が膨らみました。ライターとして、フリーランスとして、「これはあるある。めちゃわかる!」と頷きながら、悩めるWebライターにとって心強い本だろうな、と感慨深く熟読した記憶があります。
読後に感じたことは、案件の提案やクライアントとの関わり方など、フリーで活動するライターさんなら、誰でも体験するであろう対峙方法やノウハウが書かれいて、「フリーランスとして活動する」ために必要なビジネススキルのポイントが詰まっていると思ったんですね。
● クラウドソーシンググを初めて利用する人
● Webライターを始めようと思ってる人
● フリーランスになろうと思ってる人
そんな方に役立つ書籍です。仕事を受注するための営業や単価交渉のやり方、心構えや準備編として役立つ内容ばかり。これらを知っているか、知らないまま始めてしまうか。ほんの些細な違いが、遠回りする距離や時間を縮めてくれます。
長い目で見たらリスクを回避する力は、いつか必ずや必要になります。失敗を恐れる人ほど事前準備に多少時間をかけて、覚悟を持って行動していく。心や時間に余裕ができれば、何が起こっても対応できる余白が生まれます。
ポイントまとめ
- ■レベル
初心者向け、ライター経験1年未満 - ■主に習得できるスキル
クラウドソーシング活用術、単価交渉、営業術、スケジュール管理など - ■向いている文章スタイル
主には心構えや活動に役立つ本。フリーライターに必要なノウハウとメンタル。
詳しくは、書籍のレビューを参考にしてください。
3. 新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング(唐木 元さん)
1年以上のライター経験者向け。主にニュース系の記事を例文に解説された、論理的思考に基づく文章術がてんこ盛り。この本を初めて読んだとき、小難しくてスーッと頭に入らず、途中で放棄した記憶があります。でも不思議なものですね。少し期間を空けて2度目に読んだとき、「わかる。わかるわー」とすんなり読めました。
自分の経験からお伝えすると、ライター初心者には難しく感じる「文章術の書籍」かもしれません。特に直感や自己流で文章を綴ってきた人にとっては、論理的な解説が小難しく感じるのです。
しかし1年以上、ひたすら文章を書き続けた人なら、すんなり理解できる。つまり「経験を経てこそ、理解できる本」だということです。
商業ライターとして文章と向き合っていると、「自分の文章、これで合ってる?」と一定間隔でやってくる疑問。そんな悩みを抱えて、停滞する時期に読むと効果覿面だと思います。文章を書く訓練を積んでから読み、そして理解度アップ。即実践に繋げられるノウハウが詰まってます。
■ 全5章で構成された、手堅い文章術の基礎
●第1章「書く前に準備する|書く前の準備で文章が決まる」
●第2章「読み返して直す|完読を目指して文章を磨いていく」
●第3章「もっと明快に|読者の負担を取り除いてもっと伝わる文章にする」
●第4章「もっとスムーズに|読者に伝わる丁寧な文章にしていく」
●第5章「読んでもらう工夫|文章を伝える工夫は仕事の基本にも通じる」
■ 第1章「書く前の準備編」
第1章では、文章は「事実→ロジック→言葉づかい」の順に積み上げようと解説し、主に「主眼と骨子」について触れています。「主眼」は目的地であり、記事でいう主題に当たる。「骨子」は経路を指し、記事のパーツに該当します。
プラモデルの例えが秀逸でした。箱絵は「主眼」、パーツは「要素」、取扱説明書は「順番と軽重」に該当するとか、わかりやすい比喩だと理解しやすいですね。
書きたいことのパーツを揃える
- 箇条書き
- 事実を集める
- 5W1Hで整える
- 材料を入手する(=取材する)
何を、どれから、どれくらい(分量)を考えて、「要素→順番→軽重」の順番で入れるパーツを決めていくわけです。
実際に記事を執筆するとき、この本の第一章を読みながら進めていくと、ロジックを主体にした記事が書き上がってしまう。それくらい丁寧に順を追って解説されてます。
■ 第2章で「文章を磨く」、第3章で「伝わる文章へ」
第2章の「24. 読点で区切る」では、読点「、」を打つ位置に悩んでいる人に目から鱗。読点の使い方は、意味を理解できると迷いがなくなります。
第3章の「30〜47」は、初心者が陥りやすい間違いや読みやすい文章の作り方を解説し、的を得た指摘に「めちゃわかるわあ…」とウンウン頷く。特に「46.主語の【は】と【が】の使い分け」は日頃から無意識に使うからこそ、意味を言語化されると納得感あり。それを意識するだけで、すんなり使い分けができるでしょう。
■ 第4章で「丁寧かつスピード感」、第5章で「読まれる工夫」
第4章は応用編です。スピード感とは「文字数あたりの情報量」という小見出しを見て、雷に打たれました。早く文章を書けても情報が詰まっていなければ、ただ早く書いただけの薄っぺらい文章になってしまう。そこで「スピードの出し方とコントロールを覚えること」が必要だと説明してます。
行き過ぎた名詞化や体言止めのデメリット。専門用語や業界用語を噛み砕く。ピンポイントの指摘を投げ込んでくる。ラストの第5章、サブタイトルは「文章を伝える工夫は、仕事の基本にも通じる」です。なんだか深いわあ。最後まで、経験者目線の的を得た指摘が続き、基礎を捉えた【本命の文章術の本】だと改めて感じました。
「文章のつくりかた」や「文章構成」を根底から理解できる必読本。
書籍のレベル的にライター初心者というよりは、記事を書く、文章を書く経験を1年以上積んだ新人・若手ライターさんに読んでほしい一冊です。実践を積んでいないと理解しづらいので……。何度も読み返したくなる価値ある書籍です。
ポイントまとめ
- ■レベル
初心者不向き、ライター経験1年以上 - ■主に習得できるスキル
文章術の基礎、論理的思考、簡潔で情報量が多い文章、伝わる文章に必要な工夫など - ■向いている文章スタイル
ニュース記事、SEOライティング(ロジック、簡潔な文章)、一般的な商業ライティング
4.「文章術のベストセラー100冊」のポイントを1冊にまとめてみた。
ライター初心者も、経験者にも役立つノウハウ一覧表のような書籍です。文章に関する100冊の書籍を読破して、文章術のポイントをまとめて、各書籍の掲載率によって1位〜40位までをランク付け。1位から順番に突き詰めると、文章術のノウハウを概ねカバーできる秀逸な本です。
文章術に留まらず、思考法や練習方法もポイントに挙げられ、準備や心構えまで抑えた1冊ともいえます。
初心者であれば、最初の1位〜7位までを実践してみる。経験者であれば、Part3の21位以降の応用編を注意深く読むとか。逆引きとしても利用できるため、人によって使い方がわかれると思います。
<目次:1位〜15位まで>
1位 → 文章はシンプルに
2位 → 伝わる文章には「型」がある
3位 → 文章も「見た目」が大事
4位 → 文章は必ず「推敲(すいこう)」する
5位 →「わかりやすい言葉」を選ぶ
6位 → 比喩・たとえ話を積極的に使う
7位 → 接続詞を「正しく」使う
8位 → 思いつきはメモに、思考はノートにどんどん書く
9位 →「正確さ」こそ、文章の基本
10位 →「名文」を繰り返し読む
11位 → 主語と述語はワンセット
12位 → 語彙力をつけろ、辞書を引け
13位 →「、」「。」をテキトーに打たない
14位 → 段落はこまめに変える
15位 → とにかく書く、たくさん書く
そして、40位まで。
ライター経験者なら当たり前だと思うこと。無意識に理解しつつも、あまり意識していなかったこと。復習を兼ねて一読すると面白いと思います。参考にした新旧100冊の書籍、その一覧を確認するのも気づきがあり、文章に関する書籍が数多く出版されていることに驚きました。
文章術ひとつ取っても、どの本を読めばいいのか。判断するのが難しいことは、容易に想像がつきます。要点が簡潔にまとまった「文章術の復習本」として手元に置くと良さそうです。応用編までカバーしていますが、文章術の入門書と捉えていいと思います。
ポイントまとめ
- ■レベル
初心者の「入門編」、ライター経験者なら「復習と応用編」 - ■主に習得できるスキル
文章術の基礎、文章を書くためのノウハウ、テクニック、勉強法、応用編 - ■向いている文章スタイル
Webコンテンツ全般、エッセイやコラム、一般的な商業ライティング、ビジネス文書
5. 記者ハンドブック14版(一般社団法人 共同通信社)
ライターとして働き始めたら1家に1冊。必ず買ってください……と伝えたくなるライター・編集者界隈では有名どころ。辞典のようでいて、正確には異なる「記者ハンドブック」は、著名なメディアや新聞社が「表記ルール」として活用する新聞用字用語集です。
待ちに待った14版が、2022年3月15日に発売されました。752ページに渡る分厚さが、緑の表紙に包まれる。今回もボロボロになるまで使いこなすぞ!と闘志に燃えています。いや、単に雑に扱っていただけかもしれません……。
文章を綴るときに<漢字 or ひらがな>どちらがいいのか迷ったら、この記者ハンドブックが教えてくれます。
主には、「漢字の送り仮名」や「漢字を平仮名に開く」など、単語の書き方や使い方の基礎を理解できる道標のような分厚い本です。実際の辞書とは異なり、すべての言葉が収録されているわけでなく、用字用語集の前説(122ページ〜)を読むと、いくつか定義があるようです。
・同音漢字で誤用や使い分けに注意するもの
・誤った表記や避けたい語の指摘、言い換え
・送り仮名の付け方
・現代仮名遣いによる表記例
例えば、「そっこう」を漢字で書くと、いくつ思い浮かびますか。
即行(すぐ行う)、速攻(素早い攻め)、即効(すぐに効く)、速効(速く効く)、測候(起床観測)、測光(カメラ用語)、側溝(道路の脇に設けられた排水用の溝)……と出てきます。意味が異なる漢字であれば、見分けがつくけれど、「即行、速攻、即効、速効」このあたりは一瞬迷うのではないでしょうか。
ライター初心者だと、自分で判断がつきませんよね。いや、経験者でも間違います。
メディアや出版社によっても表記ルールが変わり、この本の表記が、100%正しく通用するわけではありません。しかし、表記の判断に迷ったときは、この本が導いてくれますよ。
[間違いやすい単語、または書き分け]
こと|事
作り|造り|創り|つくり
堅い|硬い|固い
意志|意思|遺志|石(えっ?)
一人|1人|独り|ひとり
・誤りやすい語句(458ページ)
・差別語・不快用語(471ページ)
・日時の書き方(511ページ)
・数字の書き方(527ページ)
・数字の表記例(537ページ)
・紛らわしい地名、会社名(563ページ)
・登録商標と言い換え(578ページ)
・紛らわしい法律関連用語(582ページ)
・計量単位について(614〜626ページ)
・新聞略語集(627〜657ページ)
このあたりは意外性があり、読み物としても面白いですよ。
メインは、400ページ超えの用字用語集です。国会関係、政治、選挙、官庁人事、会社人事に使用する例文として、30ページに渡り、記事のフォームが掲載されています。
時間があるなら、冒頭からザッと目を通す。もしくは気になる言葉が出てきたら、すぐさま調べてみる。記事を推敲するときに大活躍する記者ハンドブック。一定の基準を把握できると、言葉の使い方に悩むことが少なくなります。表記ルールはメディアごとに変わるため、目安として活用してくみてださい。
ポイントまとめ
- ■レベル
ライターなら一家に一冊!記者ハンドブック - ■主に習得できるスキル
漢字の使い分けと送り仮名、漢字を平仮名に開く、言葉に関する基礎知識を理解できる - ■向いている文章スタイル
ニュース系、出版・新聞、Web記事全般に使える
6. 伝わる・揺さぶる!文章を書く(山田 ズーニーさん)
文章と向き合い続けてきた、ライター歴2年以上の人に読んでほしい「文章とは?の本質が詰まった書籍」です。2001年発刊でありながら、現在でも通用するノウハウが語られて、今も昔も文章術って変わらないのだなと思えてきます。
どんな文章を目指したいのか。本書では、こんなゴールを設定しています。
働くために、生きるために、さまざまな必要や問題が生じ、そこに書く目的と読み手が生じる。状況に応じて、目的を果たすために、きちんと機能する文章の書き方。あなたの書いたもので、読み手の心を動かし、状況を切り開き、望む結果を出すこと、それがゴールだ。
文章を書く以前に最も大切な「問い」の立て方。その問いに対する「意見」は、自分が出した「答え」になる。いい意見を出す人は「問い」も深く、「問い」が浅薄だとそれなりの意見(答え)しか出てこない。
そして、この3つがあれば、文章は書けるという。
①論点(What)
②論拠(Why)
③意見(Theme)
「問い」を洗い出してグルーピングする。さらにエリアを広げて「問い」を考え、共通点を模索したり、伝えたい意見(テーマ)を深く掘り下げて、記事のテーマをひとつに絞る。洗い出しや絞り方の手順を丁寧に解説しながら、ひとつずつ意味づけをする。
こういった一連の流れと考え方を身につければ、あらゆる思考法に活用できる。ただ悩み続けるたり、解決策を見つけられない体質から、おさらばできるわけです。この「論理的思考」が備わってない人は意外と多いと感じていて、文章も同じく、根底にある「思考法を習得する」ことで、文章を書く土台が築かれるのです。
この土台なくして、心を揺さぶる・伝わる文章を書くことはできない。という考えに寄り添って丁寧に解説しているため、本の手順とおりに実践すれば、「問い」の洗い出しからテーマの絞り方まで疑似体験できます。
Webに関するノウハウはないけれど、真摯に文章と向き合っているライターさんに役立つ書籍です。中盤から少し難しく感じますが、文章を書くために思考も試行錯誤も重ねた人であれば、ズシンと響いて腑に落ちる。著者・山田ズーニーさんの心を揺さぶる文章をしかと心に刻み、その大切さと重みを感じることでしょう。
「何のために文章を書くのか」
この永遠の問いと向き合い、今一度「文章を書くこと」を見つめ直すキッカケになると思います。
ポイントまとめ
- ■レベル
ライター歴2年以上、または1年以上がっつりと文章を書き続けてきた人 - ■主に習得できるスキル
「問い」の洗い出しと絞り方、論理的思考、記事テーマの決め方、倫理観 - ■向いている文章スタイル
コラムやエッセイ、ジャーナリズム、企画込みのWeb記事
7. 20歳の自分に受けさせたい文章講義(古賀 史健)
「話せるのに書けない」という人がいる。言葉を話す時はテレビ。文章を書く時は新聞。だから、そこに表情や声のトーンはなく、ラジオですらない。武器は言葉だけ。話し言葉と書き言葉の違いから「話せるのに書けない」という現象が起きている。
書く技術が身につけば、ものの見方が変わり、物事の考え方が変わる。そして世界を見る目も変わってくる。「話し言葉」を「書き言葉」に変換するノウハウを身につけて、自分の気持ちを「翻訳」してみよう。」
冒頭部分を読んで、ふむふむ…と頷きながら、読み始めたばかりの前書きにグイグイと引き込まれていく。
なぜだろう?と理由を考えたところ、漠然とした「できない」や「難しい」をひとつずつ分解して紐解いてくれるから、理解しやすく納得感が半端ない。
「話せるのに文章が書けない」を解消する術は、文章の構造、その意味や理由から理解する必要があって、ライターとして文章を書く、言葉を綴るとはどういうことなのか。ノウハウ重視というよりは、「なぜ、こう書くといいのか」「なぜこの書き方はダメなのか」そんな意味づけから解説してくれるから、文章との向き合い方、倫理観まで、この本を通じて伝わってきます。
<目次>
第1講 文章は「リズム」で決まる
第2講 構成は「眼」で考える
第3講 読者の「椅子」に座る
第4講 原稿に「ハサミ」を入れる。
この目次を見て、どう思います?
文章はリズムだ。読者の椅子に座るんだ。構成は眼で考えよう。 原稿にハサミを入れよう……。目次を見て疑問を抱いたり、好奇心が膨らんだ。という人には向いてる書籍だと思います。それは目次が意味することを想像できているから。
書籍の構成を要約すると、第1講は文章。第2講は構成。第3講は読者。第4講は編集。
この本は「想像しながら読む本」だと感じていて、想像を膨らませて理解することで、著者が何を伝えたいのか、その意図を掴むことができる。ライター初心者だと途中から難しく感じるでしょう。もし難しく感じたなら、この本を読む準備がまだ整っていない、ということ。想像できない(理解できない)のはライター経験が少ないからです。
2012年に発刊された280ページからなる文庫本。しかし、内容がまったく古く感じない。流行り言葉とか、視覚的な読みやすさは年代ごとに変われども、基本的な文章のの型は、年月が経過しても劣化することがないのでしょう。
人によってはモチベーションが上がって文章を書く意欲が湧いてきたり、共感という名の納得感がじわじわ浸透する。そんな読み応えを感じます。論理的に導かれたやり方や考え方だから、なるほどっ!と大いに頷ける。ギューッ!と内容が詰め込まれて、一時期はよく持ち歩いて1冊目はボロボロになりました。
言葉の大切さ、文章の根本的な骨組み、文章と向き合う心構えなど、文章を書くことを仕事にしている人には、ぜひ読んでほしい1冊です。
ポイントまとめ
- ■レベル
ライター歴2年以上、または1年以上がっつり文章を書いてきた人。文章が書けないを解消したい人。 - ■主に習得できるスキル
文章や記事の構成、文章術の基礎、記事を1本書くために必要な能力 - ■向いている文章スタイル
コラムやエッセイ、Web記事、ブログ記事、考察を掘り下げる記事
8. 書くのがしんどい(竹村 俊助さん)
読みながらメモを取ったら、膨大な量になっていた。
ライター経験者や定期的に文章を書いている人に向く文章術の書籍です。経験者だから有益な情報として生きてくるし、すぐに実践しやすい。しかし、第1章の「書くことがなくてしんどい」は、ライターを始めたばかりの頃、よく陥る心理だと思います。
この書籍は、文章や記事を書くことをテーマに5つの「しんどい」から原因を紐解いて、ノウハウを学びながら悩みを解消・改善していく。そんなノウハウや考え方がまとまり、文章を書く心理的ハードルを下げてくれます。目次の中に気になる「しんどい」があれば、読んでみる価値がありそうですよ。
<目次>
CHAPTER1
書くことがなくてしんどいーー書く以前の「取材」と「思考法」
CHAPTER2
伝わらなくてしんどい――「わかりやすい文章」の基本
CHAPTER3
読まれなくてしんどい――文章を「たくさんの人に届ける」方法
CHAPTER4
つまらなくてしんどい――商品になる「おもしろい文章」はこうつくる
CHAPTER5
続かなくてしんどい――書くことを「習慣」にする方法
CHAPTER6
書けば人生は変わる――「しんどい」の先にある新たな自分
もうもうもう……。身につまされるし、身に覚えがありすぎる。5つの「しんどい」は、まさにライターあるあるです。どこで躓くかは人によりけりだけど、その原因や解決方法を探りながらノウハウも身につくと。
ライターとして活動する上で、自分のライティングに迷いがあったり、スキル(or 文章力)が停滞してると感じる人。何かしら行き詰まりを感じている人に役立つ書籍だと思います。
著者の思考法やノウハウをロジカルかつ、わかりやすい例えで紐解き、読みやすく理解しやすい。ポイントを突いた内容だから、すぐに実践しやすい。知識をインプットしたあと、アウトプットとして実践する。この繰り返しが大事なんだなと、つくづく感じます。
ポイントまとめ
- ■レベル
ライター歴1年以上、または定期的に文章を書いてる人 - ■主に習得できるスキル
5つの「しんどい」を解消・改善していく。文章を書く基礎力、わかりやすい文章を書くコツ、継続力、Twitter(投稿のコツ)など。 - ■向いている文章スタイル
コラムやエッセイ、Web記事、SNSの投稿文(特にTwitter)など。
9. 読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術(田中 泰延さん)
「あなたはゴリラですか」
はっ!? いきなりこの書き出しから始まり、度肝を抜かれた。
さすがは元電通のコピーライター田中 泰延さん。出版社の編集者から書籍の執筆を依頼された熱烈なラブメールを掲載した流れも異彩を放っていて、本書の中では、何度も「これは文章術を学ぶ本ではない」と書き記されて、「文章を書くために必要な考え方」を示す本として、独創的な発想と思考法が書かれていました。しかも比喩とか、すこぶる面白いんですよ……
なにを書くのか。
だれに書くのか。
どう書くのか。
なぜ書くのか。
この4章にわかれて、泰延節が炸裂してます。
各章の終わりに、文章術コラムと題して「広告の書き方」「履歴書の書き方」「書くために読むといい本」それぞれが20ページ以上。ご本人曰く、この部分は真面目に書いてしまった… らしいです。ほんとその通り、凝縮した深い思考が真面目に綴られていました。
初心者が読む。というよりはライターとして執筆活動してる人が読むと、斬新で目新しい考え方にグッとくるでしょう。「どこで調べるか」で語られた図書館の利用方法はさすがの博識だし、「巨人の肩に乗る」は腑に落ちすぎて、わかる…わかる…と心の声がシンクロしました。
事象に出会ったとき、
そのことについてしっか調べて、
愛と敬意の心象を抱けたならば、
過程も含め、自分に向けて書けばいい。
本の内容を要約すると、たった4行だったらしいです。
いやいや、そんなこと全然ないですよ。
コピーライターならではの世界観で表現された言葉選びの清さ。無駄な言葉を削ぎ落とした鋭い思考は、ドシンッ!と読者の思考を突き破り、自分のワンパターン化した文章に光を当てて斬新な閃きを与えてくれる。そんな威力を放つ書籍だと思いました。
自分が読みたい文章を書こう。そのために必要な考え方とは?
初心者でも理解はできます。しかし、すぐ実践に生かせる環境が目の前にある、半年から1年以上の経験を持つライターさんに役立ちそう。自分の文章力に停滞を感じているライターにこそ、読んでほしい本ですね。
ポイントまとめ
- ■レベル
1年以上の執筆経験を持つライター - ■主に習得できるスキル
文章を書くために必要な考え方。リサーチのやり方、企画の根幹、広告コピーの考え方、博識な図書館利用方法など。 - ■向いている文章スタイル
主には随筆。エッセイやコラム全般、事象を元に心象を交えて書くニュース記事など。
10. 書く仕事がしたい(佐藤友美さん)
この本は、文章術の本ではありません。
本書の冒頭1行目に書かれたとおり、文章術のノウハウ本ではなく、ライターとして活動するために必要な準備、ライターにとって必要なマインドや役立つ裏技など、ライターにとって大切なこと、著者の経験談が赤裸々に語られています。
この書籍は、ほんと面白かった。著者の考えや思いを、ギュッと詰め込んだ新感覚のライター本です。ライターあるあるの面白さ、驚きの発見とか、好奇心が膨れ上がり、勢いに任せて一気に読了です。
これはライター経験者だから抱ける感覚でもあり、自分の経験と著者の体験談を重ね合わせて、「ああ、わかる。わかるなあ」と共感したり、「そんなやり方もあったか…」と気づきを得たり、今後の方向性、ライターとして活動を続けることに躊躇している人に読んでほしい書籍です。
ライターとして、どのように活動していくか。
・仕事の増やし方や選び方
・原稿料の単価の上げ方
・営業したり、売り込む方法
・企画の提案方法
・編集者とのやり取り
など、著者の活動や考え方が斬新かつ、新鮮に感じます。
ノウハウ編では、インタビューをするときに大切にしたいこと。取材の準備、徹底したリサーチ、炎上を防ぐために大切な推敲など、事前の心構えや応用編の裏技に納得感が増すばかり。トライ&エラーを繰り返した著者自身の実体験から得た唯一無二のノウハウだから、読み物としても面白いんです。
大勢が同じ体験をしても、人によって解釈や受け取り方は当然ながら異なります。佐藤友美さんの考え方や体験談は驚きの連続というか、ジェットコースターで急降下したと思えば、土台を叩いて固めてしっかりと基盤をつくり、行動と思考を止めず常に走りながらも、舗装された安心・安全な坂道を1歩ずつ力強く登っていくような安定感がある。
自分が今どこを歩いていて、3年後、5年後はどんな場所を歩いていたいか。
数年後の未来を視野に入れて動くから、現在の活動が未来へと結びついて、お仕事も人との繋がりも思考する時間も【自分の今】を大切に扱う。人一倍思考した痕跡と失敗から身についた佐藤友美さんの論理的思考には、度肝を抜くようなアイデアが潜んでいました。
<各章のタイトル>
CHAPTER1「書く仕事を知りたい」
CHAPTER2「デビューするまでのこと」
CHAPTER3「書く仕事に必要な技術」
CHAPTER4「書く仕事に必要なマインド」
CHAPTER5「とどまらずに伸びていくこと」
各章を要約すると ❶ライターという職業 ❷準備編 ❸実践編 ❹マインド編 ❺これからのこと。
各章の始まりに書かれた「コラム」がまた面白く、その光景が映像として浮かび、思わず笑い、そして身が引き締まる。具体的なノウハウが語られたと思えば、過去の体験談が飛び出し、ライターあるあるの面白さが木霊する。ライター経験者なら、読んでいて痛快に感じると思います。
ライター歴20年のベテラン、佐藤友美さんの頭の中を覗き込み、過去の出来事を追体験するようなスリリング。生きた体験と情報だからこそ、説得力と納得感が増すんですよね。息の長いライターとして活動したい方にこそ、読んでほしい書籍です。
そして必ず、すぐ疑似体験すること。
自分も経験することで「この書籍が伝えたいこと」を身をもって体感できると思います。いやあ、ほんとに面白かったです。書籍のレビューを書いたので参考にご覧ください。
ポイントまとめ
- ■レベル
ライター歴1年以上、または現在がっつり文章を書いている人 - ■主に学べるナレッジ
ライターとして活動する準備、企画の提案や売り込み方、取材に対する心構え、インタビューで大切にしたいこと、炎上を防ぐために大切な推敲、ブックライターこと、編集者との付き合い方、収入増加とキャリアアップ、自己管理におけるマインドの在り方など。 - ■マインドに関する学び
フリーライターに必要な心構え。ライターという仕事の本質と向き合える。仕事や自分と向き合う勇気が持てる。未来に向けた、より良いマインドの在り方を理解できる。じたんだ踏まずに1歩踏み出す勇気が持てる。
<ただ今、更新中>
あと数冊ほど、追加します。沖縄を拠点に活動するライター・編集者みやねえ( @miya_nee )でした。それでは、また!!