2018年6月、Canva Japanさんに寄稿した記事を、許可をいただき掲載しています。(2021年3月、新たに編集を加えました)
———————————————–
今やカフェとひとえに言っても、会話や食事をする場所だけではなく、ひとりで読書タイムを楽しんだり、パソコン作業や打合せに利用したりと、さまざまな目的でカフェタイムを過ごす人が増えています。カフェによっては店内で物販やイベントを行い、カルチャーを発信する店や、人と人を繋げるコミュニティの場づくりを目指す店もあり、その目的や利用価値は多様化しています。
各地に溢れるカフェの中でも強く印象に残る店は、「グルメ × ●● × ●●」と複数のキーワードを掛け合わせた特徴をアピールし、自店の強みをコンセプトにおいしい料理やサービス、内装も含めたトータルの世界観を演出するカフェです。
しかし、その良さが伝わらないまま、情報を発信してもお客様には振り向いてもらえません。
直接手にする紙のフライヤーは、カフェの存在や認知度を広めてくれるチャンスを掴む手紙のようなもの。「このカフェは、どこにあるのだろう?」とフライヤーを手に取ってもらえた時、写真やデザイン、そして掲載した文章が生きてくるのです。
カフェのフライヤー制作。その1つ目のハードルは、まず手に取ってもらうこと。
その決め手となるのは、写真とデザイン、引きつけるキャッチコピーです。そして手に取ってもらったあと、文章を読んでもい、2つ目のハードルが、カフェへと足を運んでもらうこと。最終目的は、来店後に再び足を運んでくれるリピーターを増やすことです。
その第一歩を踏み出すための「カフェのチラシやフライヤーづくり」に必要な文章術を紹介します。
目次はこちら
カフェの独自性!コンセプトとキャッチコピーで魅せる
本来のカフェの目的は、食事をしながら語らう場所。純粋にコーヒーを楽しんでもらい、料理や食材にこだわるだけでなく、カフェを入り口にカルチャーを発信したり、地域の息づかいが聞こえるコミュニティの場を形成したりと、目的の多様化によってさまざまなタイプのカフェが増えました。
そこで、カフェの活動や世界観に付加価値をのせて、特徴や強みをアピールしていく必要があります。しっかりと軸を持ったコンセプト。または、カフェのテーマに合わせて柔軟性や余白を持たせたコンセプトもあり、それを「一言で伝えるならば、何だろう?」をキャッチコピーとして言語化します。
例えば、複数のフライヤーが並ぶ棚から、1枚のフライヤーを手に取った人がいる。
その場面を想像すると、それはほんの一瞬の出来事です。引きのある「キャッチコピー」を大きな文字サイズで掲載する。そのキーワードに興味を持つ人は無意識にフライヤーを手に取るでしょう。
デザインや写真、キャッチコピーで惹きつけて「フライヤーを手に取る」という1つ目のハードルをいかに超えていくか。カフェに足を運んでもらうまでのストーリーを想定して、じっくり言葉を吟味して、時間をかけてキャッチコピーを考え抜いてください。
キャッチコピーの考え方と作り方は、こちらの記事をご覧ください。
写真もじっくりと吟味!トータルでカフェの「世界観」を作ろう
一般的なカフェであれば、こんなキーワードが想像できます。
料理のジャンル、こだわりの食材、こだわりの調理法や調理器具、オリジナルの料理・デザート・ドリンクメニュー、こだわりの器やカトラリー、特殊な家具や照明、建築デザインなど。店内の雰囲気づくりや雑貨から伝わるイメージも図りしれず。
今までに沖縄や東京で取材してきたカフェには、店内の傍らで地域の食材や食品、地元作家の器や作品の物販したり、音楽イベントや店内マルシェを開催したりと、その活動は多岐に渡ります。オーナーの思いや趣味を反映した店も多かったです。
カフェのフライヤーづくりでは、トータルの世界観に合うデザイン制作も重要な使命を持ち、「デザインは余計な装飾をせず、シンプルを目指す」を念頭に置いて、メインカラーやイラスト選び、フォントの種類や文字サイズの大きさ含めて、一つひとつの素材が役割を担って世界観を作り出しています。
予算があるなら、プロのデザイナーにお任せするのがいいと思います。
フライヤーに掲載する写真は、外観、内観、料理、雑貨……と多々ありますが、最も伝えたいことを「写真で魅せる」のが効果的です。強調したいものを大きめの写真で掲載する。カフェであれば、料理の掲載は欠かせないでしょう。
但し、A4サイズのようにフライヤーが大きい場合と、小さいポストカードサイズでは、掲載スペースが大幅に変わります。写真や文章を詰め込み過ぎたフライヤーは、窮屈すぎてゆったりした優しさは出ません。小さい画像を数多く配置するよりは、人気の料理や特徴的な写真をドドーン!とアップで大きめに配置してください。
掲載したい写真に優先順位をつけ、スペースの確保が難しければ、大胆に写真をカットしましょう。
レイアウトや余白のバランスを考えて、写真の枚数を減らす勇気も必要です。予算があれば、写真撮影はプロのカメラマンに依頼しましょう。その写真素材をブログやSNSでも活用すれば、料金的にはお得だと思います。
オーバーな表現よりも、ショップの思いやこだわりを丁寧に言語化して「共感を生む」
料理に関していえば、新鮮な食材はもちろんのこと、特徴はいくつも挙げられます。
・地元食材の使用や食材へのこだわり
・高価で貴重な調味料
・希少価値の高い部位や珍しい食材
・オリジナルのレシピ
・ダッチオーブンや石窯など独創的な調理法
・丁寧に時間をかけた調理
・盛り付けの彩り
・老舗店や高級な調味料
・驚きのボリューム
・贅沢を感じるコース料理
・器やカップなどの食器
・小さな子供に対応したメニュー
・アレルギー対応
シェフの肩書きや受賞歴(著名な賞を受賞、海外や著名な店で修行)など、挙げたらキリがないほど、料理に関するアピールポイントはいくらでも出てきます。
稀に、あまり特徴のない一般的な料理であったとしても、オーナーやスタッフの人柄に惚れ込んだり、カフェが放つ独特な居心地の良さが癖になったり、カフェのファンになる理由はお客様ごとに異なります。
そういったお客様の感想をSNSから拾ったり、来店時に直接伺ってみるとか、外部の声をリサーチすることで見えてくる【強み】もあると思います。
「朝から営業」するカフェなら、モーニングを目的に訪れる人もいるでしょう。「夜カフェが少ない地域」であれば、夜まで営業するカフェに人気が集まります。今まで存在しなかった新しいタイプのカフェならブルーオーシャンともいえて、需要と供給が成立すれば、ローカルでも集客できるため、「実店舗の印象や切り口」は重要だといえます。
1. 強みや特徴、思想や活動を言語化する
同じ地域に類似したカフェがあっても、自分の店は何が売りで、どう異なるかをリサーチして言語化できると他店との違いを伝えられます。設備やサービス、価格設定など、優先順位が高い情報に加えて、最も共感を生みやすいのが、オーナーの思いや店のこだわり、地域でのカフェの役割などです。
何を最も伝えたいのかを明確にした上で、情報に優先順位をつけて重要なキーワードを選定します。文章を何パターンか書き出す。フライヤーのスペースに合わせた文字数でまとめる。最後に、無駄な言葉を削ぎ落として、丁寧に言語化していきます。
文章が完成したら、個人的な主張が強すぎないか、伝わりづらい文章がないかを第三者に必ずチェックしてもらいましょう。第三者の視点は大切ですし、この意見からヒントに繋がったりします。顧客のニーズと自分たちの伝えたいことをわかりやすく伝える。表面だけの薄っぺらい言葉はすぐに見抜かれるため、言語化含めてしっかり考え抜いてください。
2. ありきたりの言葉を使わない
私が住む沖縄でよく見かけるグルメ系のワードを書き出してみました。
「ゆったり」「のんびり」「まったり」「島時間」「島野菜」「海カフェ」「古民家カフェ」「南国らしい」「沖縄らしい」「沖縄県産」「地元食材」「新鮮野菜」「沖縄料理」と、まだまだ出てきます。
できるだけありきたりな言葉は使わず、どうしても使う必要があるときは、詳しい描写や貴重な情報とともに記載すると効果的です。
・○○という理由から、貴重な沖縄料理です。
・地元農家から取り寄せる朝採りの新鮮野菜です。
食材に対しては、「こだわりの食材」「選りすぐりの食材」「厳選した食材」「地産地消」「地元食材」「県産食材」など、よく目にする言葉です。
抽象的な言葉や漠然とした表現では何も伝わりません。お客様がイメージしやすい描写を「言葉の持つチカラ」を借りて、詳しく翻訳する必要があるのです。
「厳選した食材」を例に挙げると、、、
①フランスで修行を積んだシェフが厳選した食材
②地元農家から有機野菜を直に仕入れて厳選した食材を〜
③各地の漁港から産地直送された厳選した食材(魚介類)を〜
説明を加えるとイメージしやすく、貴重で特別感のあるキーワードを使うと訴求力が上がります。事実に忠実でリアルな表現や具体的な言葉を選び出すコツは、現実を客観視できるかどうかです。それらの事実をイメージに近い言葉へ変換して、類語や対義語、言葉で表現できる振り幅を探ります。
オリジナルを意味する言葉なら「自家製」「独創的」「独自性」「手作り」といった言葉にも変換できます。特に、食品に対して「安心安全な〜」といった表現は注意が必要です。有機野菜や無農薬野菜は「安心」ではあるけれど「安全か?」といえば、人によって考え方や基準が変わり、本来100%の安全を保証するものではないからです。
リアルに忠実な言葉選びを!誇大広告は信頼度を下げる
最も気をつけてほしいのは、オーバーな表現を避けること。
現地に足を運んだとき、ニュアンス違いが発生しやすく、「誇大広告」のように過剰な表現をすると「想像よりも今ひとつだった」と逆効果に繋がるからです。 最も悪質なのは「嘘の情報」を流すこと。今後の信用や大事な口コミを左右することに成り兼ねません。
いくつか例を挙げてみました。
・「有名」や「人気」
・○○(地域)で一番
・○○(地域)初!
・○○(地域)最大級!
誰が「有名」だと言っているのか。それは文章を書いた本人ですよね。行政やビッグデータで検証した数値の比較から「○○(地域)で最も人気」と実証可能なら問題ないのですが、「有名」かどうかは誰にも判断がつかず、文章を書いた人の思い込みに過ぎないのです。
但し、「人気」という言葉は場面によっては、正しく使えます。
昼時は行列しているから、人気店(=現在は)。1日300個を売り上げる人気店とか。店内で比較して「この店で一番人気」「(子供がよく注文するから)子供にも人気」は可能な表現です。そこに根拠を追加すると説得力が増します。「1日○個の売上」と数字を入れるだけで伝わりやすいですよね。
実証できるデータがある場合を除き、オーバーな表現は極力避けてください。
第三者から見ると「誇大広告」のように感じるため、リアルさが欠如する上に今後の信用にも関わります。逆に事前に得ていた情報よりも、来店時にお客様の期待値が超えると自然と評価は上がります。そのために予めハードルを下げておくのも方法の1つです。
等身大のありのままの姿を自分の言葉に託して、オーバーすぎず、過剰に装飾せず、自然体で言語化してみてください。
足を運ぶための理由づけと「実店舗の基本情報」工夫の仕方
子育てママ向けにキッズルームの設置、ペット同伴OKとか、誰かの課題を解決できる設備やサービスは需要が高く、お客様が来店する言い訳を作ってあげると訪れやすくなるものです。
1. 並列な特徴を箇条書きにする
特徴だけをまとれば、お客様が確認しやすく便利だからです。本文と区別して、「特徴」を一つの塊として箇条書きでレイアウトすると、視認性もよくなります。
・キッズルーム完備
・ペット同伴OK(テラスのみ)
・バリアフリー対応
・コンセント利用可能
・無料駐車場あり
文字数を揃えるのがポイントです。お客様が便利だと感じる特徴をまとめておくと、「行きたい」から「行こう」へと気持ちを動かす訴求力が上がります。他のカフェではあまり見かけない設備や特徴も有益です。
2.「お得な情報」を目立たせる
初めて実店舗に足を運んでもらうには、「幸福度」を上げる仕組みが必要です。特に「特別感」「お得感」は有効ですね。
・金銭面での「無料・半額」
・立地に便利な「駅チカ」
・新しいサービスや時間指定のサービス
お客様が得する情報は、目立つように掲載します(文字色で強調、文字サイズを大きくする)。書体=フォントの種類によってはオーバーなアピールに見えるため、単なる「安売りするカフェ」に見えないよう、デザインに注意してください。
「特別メニュー」「期間限定」「旬の食材」「プレゼント」「割引キャンペーン」などの言葉はインパクトが出ます。
但し、季節限定サービスを印刷すると、フライヤーの使用期間が限定されるため、キャンペーンチラシ以外には不向きです。別途、サービス券を作成してフライヤーにホチキスで止めたり、カラークリップを使えば見た目もかわいいフライヤーの完成です。
工夫次第でアレンジ可能。ひと手間かけると目を引きますよ。通年のサービスだけ、フライヤーに記載しましょう。
・コーヒーおかわり自由
・コーヒーおかわり半額
・ランチタイム限定!ドリンク1杯無料
・6歳以下のお子様に!○○プレゼント
・モーニング始めました!
・○○線○○駅から徒歩2分!
また「ワークショップ」や「イベント」を開催すれば、日頃とは異なるユーザー層が来店するはず。プレゼントや割引キャンペーン、ワークショップやイベントを開催するのも有効な手段です。初めてカフェに足を運ぶ理由を作ってあげると解釈すれば、お客様目線に立ったイベントの構想が思い浮かぶと思います。
リピーターが集う周年祭へのお誘いもまた特別感があって嬉しく感じますよね。
3. 店舗の基本情報について
最低限必要な情報は、店名、住所、電話、営業時間、定休日です。
そして、営業時間は正確に記載します。モーニングやランチタイムの時間帯、ラストオーダーも掲載するとお客様のニュアンス違いを防げます。広い店内なら席数、ローカルなら駐車場の有無、と有益な情報も掲載しましょう。
【住所について】
フライヤーの場合、基本は市町村から。幅広く各地で配布するなら都道府県も入力。「丁目、番地、号」を使用せず数字と「ー(半角ハイフン)」だけで表記して、念のため、ビル名や階数は入れましょう。但し、紛らわしい場合は読みやすい表現を優先してください。
[参考例]
❌港区六本木8丁目12番地24号 ABCビル 2階
❌港区六本木8-12-24(階数が必要)
⭕港区六本木8-12-24 ABCビル 2F
⭕港区六本木8-12-24 ABCビル 2階
🔺東京都港区六本木8-12-24 ABCビル 2F
住所を表す言葉は「住所」「Address」「Add」「ADD」といくつか考えられ、場合によってはここを省き、スッキリ表記する方法もあります。
[参考例]
住所:東京都港区六本木8-12-24
Address:東京都港区六本木8-12-24
Add 東京都港区六本木8-12-24
東京都港区六本木8-12-24
カフェのスタイルに合わせて、カフェのイメージと重なる表記を選んでください。
【電話番号について】
スマホ利用者を考慮して必ず市外局番から掲載します。基本、英数字は半角入力。数字の間には「-(半角ハイフン)」を使用します。(数字がくっつきすぎて窮屈に見えるなら、全角数字に変えます)
❌56-7890
⭕1234-56-7890
【その他】
・駐車場の有無:地方なら必須
・メールアドレス:あれば掲載
・QRコード:公式サイトへ
公式サイトの「QRコード」を掲載すると、お客様にとって便利な上にサイトに訪問してもらえます。SNSの公式アカウントも有効ですから、最新情報の更新頻度が高く、詳しい情報をピックアップできるサイト・ブログ・SNSのどれかひとつに絞ってQRコードを掲載しましょう。
QRコードについては、「イベントのフライヤー制作に必要な文章術」でも説明しています。
キャンペーンを実施し、来店してもらうチャンスを作るのも手段のひとつ。
カフェの軸をしっかりと持ち、それをコンセプトやキャッチコピーで言語化して、思いやこだわりを本文で伝えながら、カフェの特徴やサービスを箇条書きで簡潔にまとめる。イベントやワークションなど、別の切り口で集客をすれば、今までと異なるお客様に響く可能性があります。
最終的に、自然と口コミで広がる理想的な流れを作れるといいですよね。集客の入り口は多ければ多いほうがベスト。フライヤー制作後は、PDFデータやJPGデータに変換して、ブログやSNSでも発信しましょう。