2018年6月、Canva Japanさんに寄稿した記事を、許可をいただき掲載しています。(2021年3月、新たに編集を加えました)
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SNSでもイベント情報を発信できるようになり、特に2020年は、各地でオンラインイベントの開催が活発になりました。ネットを介してイベント情報を発信するメリットは、届けるスピードの速さと情報の探しやすさでしょう。
地域によってはフライヤーを活用するメリットも大きく、実際に手に取れる距離感の近さから地域の人たちとの繋がりが深まり、親近感が生まれやすくなります。また、フライヤーのデザインデータは、SNSやブログにも活用できるため、今やフライヤーは印刷物だけでなくWebでの利用価値も高まっています。
ここで質問です。
フライヤーを手に取るとき、まずどこに目がいきますか。
まずはタイトル。次にデザインや写真が目に入る。一旦、持ち帰って文章を読み、「これは気になる……」と感じたら、スケジュールを調整したりしますよね。
イベントの開催は、基本1回限り。または一定期間で終了します。
ショップのフライヤーとは異なり、継続して活用できず、期限を経過すると残念ながら処分せざるを得ません。だからなおのこと、一球入魂のように1枚のフライヤーに熱いメッセージ性を込めた言葉選びとデザインを通して、手にとってもらえるようにイベントの世界観をイメージしやすいフライヤーを作成する必要があります。
今回は、メッセージ性を追求したイベントのフライヤー作りにおける「文章術」を紹介します。
目次はこちら
ひと目見た瞬間に「引きのある」イベントタイトルの考え方
膨大なイベント情報の中から探し出してもらうのは、至難のワザです。
そこで、最初に目にするであろう「イベントのタイトル」がユーザーを惹きつける決め手になります。ある種のインパクトと興味をそそるメッセージをいかにタイトルに込められるか。紙のフライヤーは、いかに手に取ってもらえるかが勝負どころです。
例えば、開催場所の「地名」や「オンライン開催」を大きく入れて、「何を体験できるのか」がひと目でわかると伝わりやすいですよね。講座やワークショップであれば、初心者向きや上級者向きなど、参加者のレベルを明確にすると参加者が判断しやすくなります。
また、漢字・ひらがな・カタカナ・英語を上手に使いわけて、目を引く言葉や語呂感を考えながら重要なキーワードを絞り込みます。キーワードの選定によってイベントの印象がガラリと変わるため、ありきたりでなく、特徴をぎゅっと絞った独自性を放つピンポイントな言葉を選び出しましょう。
参加者が自分事化できるような「興味を引くキーワード」をタイトルに入れる
1. ジャンルをカテゴライズする
主に、どのようなジャンルのイベントなのか。
特徴を掴んでキーワードを絞り込みます。教養や趣味的なカルチャーであれば、「音楽、美術、文学…」など大きなカテゴリの括りがあり、さらに音楽を絞り込むと「ロック、ポップ、レゲエ、クラシック…」へと分類され、ロックひとつを取ってもさまざまな種類が存在します。
細かい描写のジャンル分けができるとターゲットを明確に絞り込め、そのターゲット層に響くキーワードが浮かび上がってくるはすです。
2. イベント運営者や関係者の特徴をあぶり出す
イベントの内容によっては、イベント運営者や関係者がどのような人たちかを知ることで、その活動や思考に共感した人たちの参加意欲が高まります。自分たちが何者であるのかを明確に示すと、その先のストーリーに面白みや楽しさを見出してくれるようです。
「20代読モ女子が企画!」
「起業家1年目の新米主婦が〜」
「仏料理シェフが語る○○市の食文化」
上記は、2つ以上のキーワードが入り、「起業家1年目の新米主婦」に限っては、「起業家+主婦+新米起業家+新米主婦」と4つの意味を込められます。ひと言で語ると自分たちは何者なのか。それを言語化するたけで、興味だけでなく安心感も提示でき、これは一般人でも可能な表現です。
「○○大学の1年生」や「○○のコアファン」と自分の環境や趣味を言語化すれば、共感者が現れるかもしれません。タイトルが長くなる場合は、タイトルとは別に、イベント概要や説明文に「自分たちが何者なのか」を掲載してみてください。
3. 参加者を絞り込み、呼びかけるキーワードを
ある程度カテゴライズできると、「誰に向けたイベントなのか」をイメージしやすくなります。
「これは参加しなくちゃ!」と自分ごと化したり、「自分と近い環境にある人」だと認識されれば、共感から参加意欲が生まれたりします。趣味を共有できる、何かのファン同士、同じ境遇の人と繋がれる、ライブのような一体感を楽しめる。ある共通点から共感が生まれるからです。
参加者への呼びかけに有効な方法は、カテゴライズするキーワードです。
「OL限定」「親子で楽しむ」「起業家1年目必見!」などと具体的に呼びかけ、さらに細かく描写すると「新卒OL限定」「新米ママが親子で楽しむ」「IT系起業家1年目必見!」さらにイメージしやすくなります。
「地域、年代、職業、形態、趣味、スキル」など、さまざまな分類が考えられ、イベントの規模に応じてカテゴリを細分化していく。逆にあまり絞らず、大衆に向けて参加者を募ることもできますが、かなり魅力的な引きと大勢を巻き込む拡散力がなければ、難しいでしょう。
[カテゴライズの一例]
・地域:○○市民、○○県出身、○○商店街
・年齢:大学生、新卒、アラサー女子、シニア
・形態:OL、サラリーマン、主婦、イクメン
[職業と形態でカテゴライズ]
・職業の形態:起業家、フリーランス、会社員、契約社員
・職業の大カテゴリ例:クリエイター、営業、サービス業、
・職業の小カテゴリ例:ライター、デザイナー、プログラマー
・スキル別:初心者、上級者、新人、起業家1年目
言葉ひとつでがらりと印象が変わります。よりターゲットに近い言葉選びをして、自分ごと化や共感を呼べるキーワードを探してみましょう。
4. 地名や会場名について
小規模イベントであれば、都道府県より市町村や駅名の表示が望ましく、知名度が高い人気の会場であれば、会場名を入れるのも有効です。但し、文字数が多い地名や会場名はNG。書き方の工夫が必要で「〜 in 六本木」「六本木ヒルズ開催!」「六本木で朝活!」といった少ない文字数で簡潔に伝わる表現を心がけましょう。
余談になりますが、イベント概要やターゲットに合わせた会場選びも、イメージづくりには欠かせない大切な要素です。親子向けなら遊べる公園や親しみやすい公民館。20代OL向けには、かわいい雑貨やアートを施した流行りのお洒落カフェ。30代の会社員であれば、落ち着いたコワーキングや静かな環境のビアバーなど、イベントの趣旨やターゲットに合わせて会場を使い分けましょう。
5. 継続性のあるイベント
今後も継続が予想されるイベントならば、タイトルを安易に決めるのはNGです。今後を意識してその先にあるストーリーまで見通したタイトルにできると、イベント名がひとり歩きをして自然と周囲に認知される傾向があります。ここは妥協をせずにしっかりイベント名を作り込みましょう。
新しいターゲットを呼び込みたい時は、「流行りの旬なフレーズ」や「キャッチーな言葉」を入れるのもコツです。イベントのタイトル名は長すぎず、一瞬で伝わる言葉選びとインパクトを大切に参加者がイメージしやすい表現を心がけること。練って練りまくってキーワードを絞り出してください。
「キャッチコピーの考え方と作り方」の記事も、参考にご覧ください。
タイトルの次に、イベント概要を重視!「即効性のある」文章術
タイトル名だけでは伝わらない内容を具体的に文章化します。タイトル名の作成時に書き出したキーワードを無駄にせず、イベント概要の説明文に生かしていくのです。
「Where(地名や開催場所)」
「Who(メインの出演者)」
「What(何をするイベント?)」
「How(参加方法は?)」
参加者にとって必要と思われる情報を書き出します。日時や会場名は、別途、基本情報にまとめると見やすく、インパクトに欠ける、または文字数の多い名称は、ここでは省いてください。イベント概要を文章化するコツをいくつか挙げていきます。
・パンチのあるキャッチコピーを考える(宣伝文句)
・イベントの特徴をまとめる(参加者に必要な情報)
・イベントに関わる裏側の背景を語る(ストーリー)
・参加すると得られる価値を提示する(ベネフィット)
・箇条書きで情報を並列に書く(簡潔に情報をまとめる)
事実だけに焦点を当てて客観的な視点でイベントの強みと特徴を簡潔な文章で綴っていきます。初心者向けのイベントであれば、専門用語を避け、逆に上級者向けならば、そこそこの専門用語を使うと想定したレベルのターゲットを獲得しやすくなります。
私が沖縄で開催しているWebライター向けの講座を例に挙げて少し補足します。2021年は、初めてオンライン講座を企画して、オンライン開催!2021年の今、ライターに必要な能力を学ぶ「Webライター育成講座」というタイトルにしました。
「オンライン開催」=全国どこからでも受講できる
「Webライター育成講座」=Webライター向け
「ライターに必要な能力」を学べる
この3点をタイトル名から推測できます。今回は裏面を活用して、以下のような内容を掲載しました。
①各回の講座のテーマと概要
②どんな知識を得られるのか(箇条書き)
③どんな人に向いているのか(箇条書き)
④自分は何者なのか(プロフィール+画像)
⑤開催に関する基本情報(後述します)
⑥申込み方法など
⑦QRコード(詳細ページ or 決済ページ)
紙のフライヤーはWeb記事とは違い、文字数に限りがあります。しかし、可能であればイベントを開催するきっかけ、運営者や関係者の思い、開催までの道のり、参加すると何を体験できるのか、を簡潔にまとめて言語化してみましょう。この部分をほんの少し入れるだけでも、参加者の熱量や関心度の高さが変わります。(ポストカードサイズなら、200文字程度)
時短で伝わる「簡潔な文章」を書くコツ
100%ジュースのように果汁が凝縮された濃厚な文章を作成するには、その意図を突く端的な言葉選びが大切です。重要なキーワードと特徴を絞り、無駄に長い語尾や過剰な敬語、冗長な文章を避けて、文字数制限を考えながら文章化していきます。
1. バランス良く漢字を使い、過剰な敬語と冗長な語尾を避ける
極端な話とすると「チャーハン」よりは「炒飯」と書くほうが文字数を削れます。しかし、漢字を使いすぎると堅い文章だと感じて、堅いイベントに見えてしまいます。また、口語調を使うと必然的に冗長な文章になるため、簡潔な言葉に変換する必要があります。
下記に例を挙げてみました。
①「〜するようなことはありません」(冗長な文章)
②「〜させていただきたいと思います」(過剰な敬語)
文字数にして13〜14文字。しかも、ひらがなが多いです。ひらがなの文章は、時に幼稚な印象を与えるため、その際は漢字を増やし、日常で使われない難読漢字は避けましょう。
①を「〜しません」に変換
②を「〜させてもらいます」に変換
スッキリした文章になりました。時には、言い切ることの清さも大切。その上で嫌悪感がないかを確認してスッキリとした読みやすい文章を心がけてみてください。
2. たまには、正しい文法を無視しても大丈夫
個人的な見解で申し上げると、正しい文法は多少無視してもいいと思っています。
「新米ママ、子育て1年目始まる」
これを正確に文章化すると「新米ママが、子育て1年目をスタートします」となりますが、一部の助詞(てにをは)をカットすることでキーワードが際立ちます。正しい文法を用いることで冗長な文章になるよりは、「参加者に伝わる言葉選びとインパクト」を重視してください。
3. 形容詞を具体的に言葉で表現する
よく講座でも話している具体的に言語化する方法。そのひとつに「楽しい、おもしろい、おいしいを一切使わずに言語化してください」といった形容詞を使わずに詳しく描写する方法があります。ここでも活躍するのが、5W1H(6W3Hまでアリ)の思考法です。
「楽しい」を別の言い方に置き換えると、心躍る、躍動感みなぎる、心が晴れ渡る、歓喜に満ちた、爽快な気分、スキップしたい気分、わくわくする、うきうきする……といくらでも出てきます。ありきたりの言葉を使うと、ありきたりな表現にしかなりません。
イベントの楽しさや面白さを「特別感やオリジナル」を詳しく(でも簡潔に)言語化して、イベントの面白さをしっかり伝えてください。
4. 最後に、推敲と修正を繰り返す
完成したら文章を整える「推敲」の作業をします。意味が通じているか、簡潔にスッキリと読めるか、このイベントに魅力を感じるか。情報不足なら補足して、不要な言葉を削り、文章の繋ぎ目を調整しつつ、コンテクストを整えます。
よく見かけるのは「文字揺れ」です。コーヒーであれば「コーヒー、珈琲、COFFEE、Coffee」と異なる文字列が出てきます。きちんと使い分けをする場合を除き、ひとつの表記に統一しましょう。
そして、最後にやってほしいこと。
文章を書いた本人が素晴らしい……これは完璧だ!と思っても、第三者に伝わらない一方通行の自分語りになっていたら意味がありません。必ず第三者に見せてフィードバックや感想をもらってください。ここは辛口コメントを期待できる人に聞くのが理想的です。何でも「いいですね〜」と答える方だと、ビジネスに関するフィードバックにおいては、適任ではないからです。
企画やアイデアを必要とする「クリエイティブの世界」では、フィードバックは不可欠です。なぜなら、何かを創造することは「細かい修正」や「軌道修正」を経てこそ、より高みに登れるからです。多くの人から意見や感想をもらい、トライ&エラーを繰り返してこそ、いい企画や素晴らしいプロジェクト、世の中に必要とされるサービスが生まれていくのです。
フィードバックに耐えられない方は、もう単純にプロのライターに仕事を任せましょう。
そんな方法もあることを理解しておけば、いざというとき、多くの悩みやプレッシャーから逃れられます。トラブルが起こる前に、第三者に頼ることも忘れないでください。
必要な基本情報を表記の仕方でアレンジ
漢字、ひらがな、カタカナ、英語。表記の仕方はさまざまです。ここで大事なのが、イベントの世界観とターゲット層の年齢です。
年配者であれば、英語よりは「漢字」に慣れ親しんでいます。漢字を苦手とする人もいるでしょう。「英語」表記だとポップなカッコよさを表現でき、ターゲットが普段、日常的に見慣れた文字を使うとスーッと頭に入って馴染みやすいのです。
1. 日時(西暦、日付、開場時間、開始時間、所要時間)
どの組み合わせが視覚的に見やすくて、スーッと頭に入ってくるでしょうか。
[時間]
午後2時30分開始!(漢字)
14時30分開始!(漢字)
14:30開始!(記号)
14:30 スタート!(カタカナ)
14:30 Start!(英語)
漢字が多いとごちゃっとした堅苦しい印象を受けます。「14:30 スタート」だと画数が少ない分、スッキリして見えます。カッコよさを演出する音楽ライブなら「14:30 Start!」と英語を使い、年配層には「14時30分開始」と漢字表記がしっくりくるでしょう。たったこれだけの文字数で表記の仕方が変わり、印象や読みやすさが変化します。
[日付]
2020年2月9日(土)
平成2年2月9日(土)
2020.2.9 SAT
一瞬での理解を促すならば、日付には「曜日」を入れましょう。日付の表記だけでは週末の土曜・日曜を勘違いする人もいて、せっかくチラシを手に取り興味を持ってくれた人を集客する機会を逃す可能性があります。丁寧に表記の仕方を模索してください。
[全角]14:30開始
[半角]14:30開始
英数字を「全角 or 半角」のどちらで表記するかで、視覚的な印象が変わります。デザインやフォントの種類によって文字の間隔(カーニング)が若干変化し、英数字を全角にすると間延びした印象を持たれます。
2. イベント会場:住所、マップを掲載、駐車場の有無(台数)
地域限定でフライヤーを配布する場合、都道府県名は使わず、市町村から掲載します。万が一、県外にも配布する場合は「都道府県名」から入れると有効です。
地方のような車移動を余儀なくされる会場であれば、駐車場の有無や台数を掲載すると丁寧な情報を提供できます。場合によってはマップを掲載して、会場近くの駅や目立つ建物があれば目印に入れると、わかりやすいです。
3. 金額の表示
漢数字、漢字、記号……といくつか表記の方法があります。
デザインのレイアウト上、基本は「半角」で入力します。万が一、文字同士がくっついて視認性が悪くなる場合は、「半角スペース」を間に入れるか、「全角」で試してみてください。
[漢数字]三千円
[円だけ漢字]3,000円
[円が記号]¥3,000
[@を使う]@3,000円
4. チケット購入ページ
紙のチラシから、Webの購入ページへ誘導するのは至難のワザです。URLを掲載しても、チラシを見ながらネットで一文字すつURLを入力する人は、ほぼいません。電話番号を掲載し、電話で申込みを促す方法もありますが、電話受付のデメリットは、口頭で氏名や連絡先を確認するため、間違いが発生しやすくなります。
そこで活躍するのが「QRコード」の掲載です。
このQRコードは、沖縄のライター・編集者チーム「OKINAWA GRIT(略して、オキグリ)」の公式ページへ飛ぶようになっています。
QRコードを生成する際、1点だけ気をつけてほしいのが、運営元が不明の怪しいサイトを利用しないこと。個人情報などを吸い取られる危険性があるからです。
あさひ高速印刷株式会社が運営する「QR code bulider( http://qr.ag-media.jp/ )」なら、URLの入力だけ。QRコードのカラーを変更、ファイル形式を選べる(JPG、PNG、GIF、透過GIF)、画像の大きさを指定でき、簡単に作成できます。
イベントのフライヤー制作に関する「文章の基礎」をイメージできましたか。まずはトライあるのみです。Canvaなどのデザインテンプレートを活用しながら、イベント情報に役立つ文章術を実践してみてください。